刑法の非現住建造物等放火の違法性に関する質問です。
公務員試験向けの刑法の参考書の 『郷原豊茂の刑法まるごと講義生中継』(TAC出版、2011年)の269頁には非現住建造物等放火の違法性に関して以下のように書かれています。
「たとえば被害者一人しか住んでいない家をその者の承諾を得て焼損した場合。これは、自分が住んでいる家を自分が燃やすのと同じでしょ?自殺が殺人ではないように、犯人は人ではないんです。だから、自分一人の家は109条2項で非現住建造物の自己所有物についての規定が適用されるんですけども、それと同じようにここでも、一人暮らしのその人の承諾をもらって火をつけた場合には109条2項の非現住の自己所有物の放火ということで軽くしてもらえます。」
つまりこの場合はAが、Bさん一人しか住んでいない家を、Bさんの承諾を得た上で焼損した場合、刑法109条2項の規定が適用され、この焼損行為が公共の危険を生じなかったときは、Aを罰しないという解釈で良いのでしょうか?
「自殺が殺人ではないように、犯人は人ではないんです」という例えがよくわかりません。
自殺は殺人では無いにしても、承諾を得た上でその人を殺害した場合は嘱託殺人罪が成立するのでは無いでしょうか?
それに刑法では類推解釈が禁じられており、刑法109条2項には「前項の物が自己の所有に係るときは」と明記されているにも関わらず、他者が所有している建造物でも承諾を得ただけで自己所有物の放火と解釈して良いという説明が、いまいちよく理解できません。もちろん老朽化した建物の取り壊し等を業者に任せる場合等は破壊の際に建物を焼損することはほぼ間違いないので、一々罪に問われたりはしないだろうとは思いますが、条文の文言からはどのように解釈すれば良いのでしょうか?
どなたかわかりやすくお教えいただけると幸いです。
1 109条2項の点については、ご理解のとおりです。
人の物を承諾得て燃やした場合、法益侵害がありません。
ただ、燃やすという態様において「公共の危険」を発生させるおそれがあるため、
但し書きがついています。
なお、これは違法性も問題ではありません。
2 刑法199条は「人を殺した者は」と定められています。
そうすると、自殺でも「自分」という「人」を殺しているのに変わりはなく、殺人罪で裁かれるはずです。
自殺未遂であれば殺人未遂ですね。
しかし、現実には殺人(未遂)罪で起訴されることはなく、199条の「人」に「自分(犯人)」は含まない、
という解釈が成り立ちます。
3 犯人にとって有利な方向の解釈であれば認められます。
類推解釈の禁止は、刑罰権の範囲を不明確にし、自由な行動を制限してしまうことを回避するためにあります。
逆方向の解釈は認められています。
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